欧州のシャチが絶滅危機

欧州に生息するシャチが、有毒なポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物が原因で絶滅の危機にあるという。自然分解されにくPCBは、他の海洋世物にとっても脅威であり、繁殖能力を著しく害している。
1987年に禁止されたPCBは、欧州各地の工場、建築現場で広く利用されていた。食物連鎖を通じて濃縮され、シャチやイルカの脂肪組織に蓄積されてしまい、母乳を介して子世代の体内にまで有害物質が引き継がれていくのだという。
14日に発表された論文の著者、英ロンドン動物学会に所属するポール・ジェプソン氏は「西ヨーロッパの海岸には、ほとんどシャチは生息していない」と述べ、地中海や北海では既にシャチが姿を消したことを付け加えた。
ジェプソン氏によると、西ヨーロッパ沿岸でも生き残っているシャチは非常に小型であり、繁殖能力が全くないか、あってもほとんど衰えているそうだ。
また、海洋学者が数十年にわたり観察してきたポルトガル沿岸に生息する36頭のシャチの群れでは、10年以上出産が確認されていないと指摘している。
雌の体内に蓄積されたPCBは、その90%を子供に移行にしての出産となる。それなのに、座礁した個体を含むシャチ1000頭以上から採取した体組織を調べたところ、すべての雌雄において同じ体内PCBレベルだったという。これは直近数年間に生まれたシャチの子供が1頭もいないということである。
PCBが海洋生物に有害であることは、以前から知られていたのだが、その具体的な影響を示した研究は今回が初めてだったという。
海の王者と称されるシャチが、人間がうみだした小さなプラスチックごみに絶滅させられてしまうかもしれない。産業廃棄物の問題は未だ各地で広がりを見せているが、具体的な解決策がない現状が悔やまれる。